ギター蘊蓄(ルネサンス編)
ギターを演奏するときに、ちょっとした蘊蓄を披露できるといいですね。ここでは、見つけた使えそうな蘊蓄を紹介します。
【ナルバエス:牛を見張れによる変奏曲】
この曲は、音楽史に残る画期的な曲だそうです。それは、史上初の変奏曲形式の器楽曲というのが理由です。
もうひとつ、この曲は男性と女性の掛け合いの歌になっているそうで、その歌の内容は、「私のために牛を見張っていてね。愛する人よ、私はあなたにキスをあげます」というもの。つまり「牛」とは、彼女のライバルとなる別の女性のことだそうです。
(出典:現代ギター「ギター前史 斜め読み」より)
【ナルバエス:皇帝の歌】
この曲は、ジョスカン・デ・プレの「千々の悲しみ」という曲をビウエラ演奏用にアレンジしたものです。「千々の悲しみ」は、ジョスカン・デ・プレが当時のスペイン国王カルロス1世(ローマ帝国カール5世:同一人物)に捧げたもので、「皇帝」というのはカール5世のことだそうです。このあたりは、「ビウエラ7人衆 西川和子著(彩流社)」に詳しく書かれています。
ちなみに、この曲は、遣欧使千々和ミゲルが豊臣秀吉の前で弾いた曲という説もあるそうな(皆川達夫氏の説)。
(出典:現代ギター「ギター前史 斜め読み」、「旅心はリュートに乗って:星野博美」等より)
【ムダラ:ファンタジア第10番】
めちゃロックなこの曲(勝手なyakateruの印象ですが)。別名「ルドヴィーコのハープを模したファンタジア」と言いますが、ルドヴィーコとは、当時、イザベル女王にハープを教えていた有名なハープ奏者のことです。
また、この曲の特徴であるカンパネラ奏法を用いていますが、数多くのビウエラ曲のなかで、この効果を狙った曲はこの1曲だそうです。アランフェスを作曲したロドリゴはムダラについて、「彼の和音は大胆な天才か、常軌を外れた感性の持ち主かだ」といったそうな。
(出典:現代ギター「ギター前史 斜め読み」より)
【ビウエラとリュート】
ルネサンス時代のギター曲といっても、二つの流れがあります。ビウエラとリュートです。個人的には、ポリフォニー的に旋律が絡み合うのが素敵なビウエラの曲と、繊細な和音の響きで魅了するリュートの曲というような違いがありそうな気がしますが・・このような違いを認識しながら、ルネサンスの曲を弾き分けるのも楽しいかも。
ビウエラ:スペイン(ミラン、ムダラ、ナルバエス・・・)
リュート:イギリス等(カッテイング、ダウランド、R.ジョンソン・・・)
ちなみに、ミランの曲等で、3弦を#Fにするのは、ビウエラの調弦に合わせるものである。また、さらに3フレットにカポを取り付けると「ビウエラ Sol(ソ)」、5フレットに付けると「ビウエラ La(ラ)」と同じ調弦になることも知っているといいかも。
1弦 2弦 3弦 4弦 5弦 6弦
ビウエラ 完4 ー 完4 ー 長3 ー 完4 ー 完4
ギター 完4 ー 長3 ー 完4 - 完4 ー 完4
(ギターの3弦を半音下げることで、2―3弦が完4、3-4弦が長3になる)